日本の憲法、その内容、わかりますか

学び

<復刊>あたらしい憲法のはなし
    編集 童話屋編集部
    1947年に文部省から発行され、
    同時に実業教科書株式会社が翻刻発行したものを底本とした

文庫本サイズで厚さ5mmほど。
今日、手に取って、今日、読み終えることができます。

1946年11月3日に公布、1947年5月3日に施行された『日本国憲法』。
この本は、公布の翌年の1948年8月2日に文部省(当時)から発行された、中学1年生用の社会科の教科書(おそらく副教材)の復刊とのこと。 1952年3月まで使用されていたそうです。

1945年8月15日の玉音放送を境に、大人たちが言うことはすべて変わってしまった。
大人たち自身は戸惑い、苦しんだことでしょう。 子供たちは大人に対して不信感を抱いたかもしれません。 そんな混乱の中、日本国民すべてに理解してほしい規則が出来上がりました。

『日本国憲法』です。

新しい憲法を “これはアメリカの押し付けだとか、GHQが草案を作ったとか”、真偽は私にはわかりませんし、その成立過程におけるGHQと日本政府とのかけひきはともかく、つらい戦争が終わって、新しい日本を創って行こうという希望が、『日本国憲法』には感じられると思いませんか。

そして、新しい憲法を子どもたちにも知ってほしいという気持ちと期待から、この本が生まれたのでしょう。

1945年、昭和20年8月15日 敗戦(ポツダム宣言受諾)
1946年、昭和21年11月3日 新憲法公布
1947年、昭和22年5月3日 施行

国民にその内容を行き渡らせるために、公布から施行まで6ヶ月間がおかれました。 11月3日は、今は『文化の日』となって祝日ですが、かつては明治天皇の誕生日で「明治節」という祝日でした。

『日本国憲法』、すなわち “現行憲法” のすべての文章(全文)は、たとえば童話屋さんから本になって出版されていますし、青空文庫さんのインターネット上に公開されています。 さらに、電子書籍として無料で発売されています。
また、小中高校生の社会科系の教科書に掲載されているかと思います。 中学の場合、「公民」の教科書の巻末に収録されていると思います。

しかしながら、憲法や法律に関わる言葉は、兎に角わかりにくいと思います。 いちおう、現代語なのですが・・・。 そこで、わかりやすく訳して、解説を加えた本をいくつか紹介します。

増量 日本国憲法を口語訳してみたら
   著者 塚田 薫  監修者 長峯信彦
   幻冬舎文庫  2017年3月発行(2013年7月単行本刊行)

口語訳というか、若者言葉にしてみたら、という感じです。 わかりやすいです。 著者は当時、大学生ですが、指導教官の法学部教授が監修をしていらっしゃいます。 ネットにアップされた文章を私は読んでいませんが、書籍化するにあたり、相当、議論や意見を交わしたのでしょう。 誤解を招かないよう、そしてわかりやすくなるよう、最低限の省略や単語の並び替えをしているようです。 一ページごとに憲法の原文と口語訳が交互になっているので、比較しやすかったです。(電子書籍版だけかもしれませんが)

この本の価値は、憲法の条文をわかりやすい言葉に置き換えて、だれもが読むことのできるものにしたというだけではないと思います。 著者がなぜ憲法を身近で理解しやすいものにしたかったのか。 “ほとんどが戦争体験をしていない国民たちへ、憲法にもっと真摯に向き合ってみようよ“ と思わせたことではないでしょうか。

憲法を理解する入口として読んでほしい一冊です。

なお、発行が2013年ですので、憲法問題や世の中のあれやこれは、今とは異なっています。 奇しくも当時の首相、安倍晋三氏の流れにある高市早苗氏が今、2026年は首相の座にいらっしゃいます。

子どもにつたえる日本国憲法
   文 井上ひさし  絵 いわさきちひろ
   講談社 2015年8月発行

いわさきちひろ氏の絵。 ある世代の人たちは、懐かしく思い、あたたかい気持ちになるでしょう。
井上ひさし氏もある世代には、『ひょっこりひょうたん島』の作者として思い出されるでしょう。
敗戦の年、井上ひさし氏は国民学校(戦時下の小学校)の生徒だったそうです。 いわさきちひろ氏は少し年上のようです。 お二人とも、昭和という時代を生きた、戦争(太平洋戦争)を知っている方々です。

絵本だからといって、タイトルに “子どもに・・・” とあるからといって、”子ども向けなんか私は読まない”、と思っている大人のみなさん、戦争を知らない大人のみなさんにこそ、ぜひ読んでほしい一冊です。

日本国憲法のすべてを解釈・解説しているわけではありません。 『前文』と『第九条』をわかりやすく、そう、あたかも固い食べ物を少し噛みくだいて食べやすくしているかのような文章になっています。
なぜ、百三条もある中から、『第九条』を選んだのか、『日本国憲法』はアメリカから押し付けられたものなのか、考えながら読んでほしいです。

手元に置いておきたい一冊です。

超訳 日本国憲法
    著者 池上 彰 
    新潮新書  2015年発行

「そうだったのか!?シリーズ」やテレビ番組での「いい質問ですね」で人気のジャーナリスト池上彰氏の『日本国憲法』の解釈書です。

「超訳」、”訳を超えている” と期待したのですが、わかりやすさにはやや欠けていました。 テレビ番組のようにボードを使いながらの説明ではなく、変化の無い文字が延々と続くと、どれが「憲法の原文」か「超訳」か「著者の意見」かがわかりづらくなってしまいます。 また、読者は「大学生以上の大人」を想定しているとは思うのですが、憲法原文のわかりにくさのハードルをぐっと下げるほどではありませんでした。

『日本国憲法』に対する意思態度(改憲か護憲かのような)は中立か少し護憲寄りに思えますが、あいまいです。 それに対して、北朝鮮や中国、アメリカの憲法に対する批判的態度ははっきりしていて、ずばずばとした口調でした。

残念ながら、“わかりやすい日本国憲法”を求める読者には、不完全燃焼で終わりそうです。

現代語訳 日本国憲法
   著者 伊藤 真
   ちくま新書  2014年発行

著者は、司法試験受験者のための予備校を主催し、もちろんご本人も司法試験に合格しているとのことです。 法律家が現代語に翻訳をして解説してくれているので、わかりやすいです。 また、構成も条文ごとに「現代語訳 ⇒ 解説」をくり返し、憲法原文は巻末にまとめて置いているので、憲法の内容そのものと意味がすっと頭に入ってきます。

また、『大日本帝国憲法』の現代語訳と解説も端的にまとめられて、これもわかりやすい。

でも、もし読む前に、挫折しそうと思っているのなら、「はじめに」と「訳者解説」を先に読んでいただきたい。今、なぜ憲法の内容を日本人に知ってほしいのか。
今、政治の場で淡々と進められていること、それらに日本人は黙っていて良いのか。
著者の法律家としての強い呼びかけがそこにあります。

高校生、大学生、社会人には読むことができる内容です。中学生にも理解できると思います。

今回、ここで取り上げた数冊の日本国憲法の解説書の中で、私はこの本を一番に推します。

私は、「5教科の中で何が一番苦手ですか」と問われたら、「社会」と答えるでしょう。例えば、“歴史”、新しい歴史がどんどん追加されていく。私が高校3年の大学受験の時には、「戦後は出題されない」なんて言われていましたが、今では、 ”高度経済成長“ は当たり前。 ”沖縄返還“、 ”オイルショック“、 ”バブル崩壊“、 ”9.11”、 ”3.11”、・・・。遡る方も、遺跡の発見によって教科書は書き換えられていきます。 いずれ、邪馬台国がどこにあったのかも明らかにされ、教科書に載るでしょう。

知識の更新、アップデートをしていかなければならないから、勉強は大人になってからも続きます。教科としては苦手でしたが、社会の勉強はいつも新鮮で楽しいですね。

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